はしっこで独り言

日常の掃溜め。主な内容は演劇部とラビアレとMETEOS。——本家「Empty SORA」の方から来た方はブラウザで戻るか横のリンクからもう一度入ってください










 ああ、あれですよね、うん。
 あういう時の思いって結構忘れがちですもんね。
 なら私のこと忘れてて当然だ。





 人と言うのはモノをよく忘れちゃったりしますけど、私はそれが極端に酷いんですよね。家族の間では通称「鶏頭」なんていう不名誉な渾名をつけられてるくらいです。散歩歩けばすぐに忘れる。右から入れば左の耳から聞いた事はスルスルと抜けていく。目にしたものは殆ど脳にインプットされていない。それが大抵ぼおっとしている時にそうなるんですよ。あ、あたりまえか。
 










風の中に飛び込め  ちょっとだけ阿呆なアレン






 風が強い。彼は学校の屋上の背の低いフェンスの上にしゃがみ、その風に飛ばされないように注意しながらそう思った。空は抜けるような青空で、ホウキで掃いたような雲が少しだけ、空の真ん中を流れている。秋の空が一番青いって言うあの人の話は本当だったんだ。と、養父との思い出に胸を馳せ、フェンスの外側を除き見た。茶色い校庭の土が目の前に広がっている。本来なら授業中の今、体育もなく誰もいない校庭は、いつもの人の暖かみが全くなくてとても冷たい。申し訳程度に、校庭の隅にうえられている木や茂みは、今はどんどん茶色くなって、冬に葉を落とす準備をしている。体育祭の時のあの活気は、もうどこにも見当たらない。






 それはちょっとした賭けだった。

 いつも校庭の一番高い木の上で授業をサボる彼は、今僕がやろうとしていることに気が付くだろうか。今の僕はどうやったって、自殺をしようとしている人物にしか見えない(と思いたい。だって、僕は今まで人が飛び下りようとしているところを見た事がないから分からないんだ)。彼が気が付けば、(彼が冷血漢でない限り)必ず僕を助けようとしてくれる。
 何でそんな事してるか? 告白する勇気がないからに決まってる! 告白する勇気がなければ、友だちになろうとする勇気もない程僕は憶病者だ。だから、今まで何度もさり気なく、彼と話す事のできる切っ掛けを作ろうとしてきた。でもやればやる程僕の作戦の失敗は酷くなるばかりで、彼はいっこうに僕に気が付いてくれない。そして、僕が考えた作戦の中で、一番やりたくなかった作戦が最終的に残ってしまった。
 彼は気が付いてくれるだろうか。もしかしたら気の上で眠ってしまっていて気が付いていないかもしれない。僕の頭の中で、最悪な状況が浮かんでは消えていく。この作戦は、僕が考えた中で一番成功率が低い上に、失敗すれば今までのどの作戦よりも恥ずかしい結果になる。いや、もしかしたら恥ずかしいどころではないかもしれない。だってこれは命をかけているから!

 僕と言う重いものを上にのせ、強い風に煽られて傾ぐフェンスの音を聞き、冷や汗を掻く。早く、早く気が付いて。そう心の中で何度も願い、彼がいるはずの校庭の一番高い木を見つめる。
 ああ、こんな時でも彼のことを考えると胸がどきどきする。そう、彼のことがこんなにも好きだから僕はこんな馬鹿げた危ない事をしているんだ。その想いが、今のこの状況に怖じ気付きそうな僕の心を支えてくれる。フェンスの傾ぐ音はよりいっそう、風と共に強くなるだけだけど、僕はきっと彼が気が付いてくれると信じて木を見つめ、フェンスの上にしゃがみ続けた。たまに危なっかしくフェンスから手を滑らし、それでも必死にしがみついて落ちないようにし、彼を待つ。
 なんて僕は馬鹿なんだろうと正直思う。こんな事で気が付いてくれるわけがないのだと、心の隅で何かが呟いている。それでも、僕は彼が好きだ。彼に気が付いてもらえるためなら何でもする世界一の憶病者。そんな僕に、運命は(僕は神は信じない質だ)微笑んでくれるだろうか?


 と、その時。ちょうど僕の頭が彼のことで一杯になった時。とうとうフェンスは僕の重みに絶え切れなくなった。


 一瞬の浮遊感の次に来る落下する感覚。僕は頭の中が真っ白になった。視界には根元からボキリと折れてしまった白いフェンスと、それを握っている僕の手。次の瞬間には目の前には空が広がっていて、ハッキリと分かるのは風が強く吹いていると言う事だけ。まだ正常に動いていたらしい頭に隅の隅の方で、「だからこの作戦はやりたくなかったんだ」と僕はただ虚しく叫んでいた。












「——い——きろ——か? い——だよ」


 声が聞こえる。耳もとで唸る風の音に混じって、声が聞こえる。ここはどこ? 僕は屋上から落ちた。と言う事は、ここは天国? それとも地獄? いや、この世にそんなものはないはずだ。と言う事はここは一体どこだろう?


「まさ——か——いよな——きろ」


 ……死んだってことは、マナにあえるのかな。ということは、この声はマナの声なのかな。なら、はやく起きなくちゃ。マナ、僕はとんでもない事をして命を落としてしまいました——


「ま——ろって——おい!!」






 アレンは突然誰かに怒鳴られ仰天し、ぱっちりと目を見開いた。と、視界一杯に広がったのは、天国の光でもなく地獄の暗闇でもなく、真っ赤な炎のような色。ついでに聞こえてくる声は、マナのモノではなく今まで影でこっそり聞いていた愛しの——


「……せ、んぱ……い?」
「あ、やっと起きた」


 気が付いてみると、アレンはラビの腕に抱かれた状態で、先輩に顔を覗き込まれているところだった。心無しか、先輩の目が起こっているように見えるが、今はそんな事よりも先輩の腕の中にいると言う事がアレンには絶えられないくらい恥ずかしい事だった。ひゃああっ、と小さく叫ぶと、すぐさま身をよじって腕の中から脱出しようとするが、先輩はがっちりとアレンの肩を掴んでいてびくともしない。その事で少し頭の中がパニックになったアレンは、口をぱくぱくさせながら、今の自分が置かれている状況を必死になって理解しようとした。
 彼はそんなアレンの様子をしばらく呆れた顔で見つめてから、深くため息を付いた。


「落ち着け。つか何でお前あんなことしてたんさ? 久々に屋上でサボろうかと思って来てみたら、ちょうどお前が落ちようとしてるところでさ……。もう度胆抜かれたっつうか……間に合ってよかったさ」


 しだいに落ち着いて来たアレンは、先輩の言葉でようやく今自分がどう言う状況にいるのかと言う事が理解出来そうだった。ようするに、さっきフェンスが折れて落ちそうになったところを彼に助けられたのだ。
 状況にようやく思考が追い付いて来た事で、改めて先輩の腕の中にいると言う事実が恥ずかしくなり、顔が熱くなる。必死で心を静めようとしても、心臓はバクバクと動機が激しく、顔はきっと真っ赤になっている違いない。パニックは治まってと言うのに、恥ずかしさからやっぱりアレンは何もしゃべれなかった。


「大丈夫? 顔、真っ赤さ。もしかしてどっか打ってた?」
「あ、……あり……が、と」
「あーいやいや、人として当然のことしたまでだから。それに目の前で死なれちゃ気分悪いし」


 やっと絞り出した声は掠れていて、それがまた恥ずかしかった。お礼くらいはちゃんと言いたかった。


「で、あんなところで言ったいなにしてたんさ? あそこのフェンス、前々からちょっと錆び付いてたのに、こんな風の強い日にわざわざ上になんか乗って」
「それは……そのお……」
「……ま、誰にだって言いたくない事の一つや二つあるか。今回は聞かないでおくさ。あ、言い忘れてたけど俺三年のラビっていうんさ。お前は?」
「えっ? あ、……一年のアレン・ウォーカー、です」
「そっか。じゃあさ、アレン」
「はい?」
「ちょうど昼休みだし、今から弁当一緒に食わねえ?」
「え、はい——って、ええ!?」
「ほら、はやく行かないと購買のパン売り切れちまうさあ」
「えっ、ちょっ」


 ラビはアレンの腕を掴み、勢いよく立ち上がと、何故かとても機嫌よく鼻歌を歌いながら校舎に戻る扉を開いた。またよく分からない状況になったアレンは、ラビに腕を引っ張られ校舎に入りながら、頭の中の冷静な部分でもしかしたら今回の作戦は成功したのかもしれない。と思った。








 微妙に学パラ。こんな馴れ初めあってもいいんじゃない?























管理者にだけ表示

トラックバックURL↓
http://sorehakuroineko.blog123.fc2.com/tb.php/183-836940a0