息抜きをしよう :あなたは幸せを望みますか?:
:116:
風が強い
こんな軽いぼくの身体じゃすぐに吹き飛ばされてしまう
もう何日食べていないだろうか 身体が冷たい
両親は「お仕置きだ」と言ってぼくに食べ物をくれなかった
ぼくはただ外の空気を吸おうと家の外に少しの間顔をだしただけなのに
お父さん お母さん ぼくが言ったい何をしたと言うの?
ここは冷たい土の中 でも土は風に殆ど飛ばされてないに等しい
あの人たちはぼくに浅くかぶせる程度しか土を盛らなかった
何故こんな場所にぼくを置き去りにするの?
冷たい身体はもう何も感じない
あの人たちはぼくをここに置いていく時酷く焦っていた
いったいぼくはどうなってしまったの?
あるのは薄い微かな意識だけ
でもその意識もだんだんとぼくの元を離れていく
ここはとても暗くて恐くて独り
あるひ ぼくの近くを人が通った
その人はぼくを見るなり口を押さえて眼を見開いた
やっと出会えたその人に ぼくは動かない身体を捨ててしばらくの間とり憑いた
ぼくの身体は小さな箱の中に入れられて燃やされた
身体が燃やされていると言うのに 今のぼくは何も感じない
あるのは 両親への今まで感じたこともないような感情
心の中は あの火のように「怒」という感情で熱くなり
この世から去ることになってしまったぼくに力を与えてくれた
さあ あの人たちのところへ
数日後 ぼくは身体が燃え尽きてしまった両親の腕を引き
黒いマントを被った骨っぽい男について
黒い世界へと降り立った
お父さん お母さん これからはずっと
一緒だよ
ね
:117:
幸せというものはは突然訪れる
それと同じくして 不幸も突然訪れる
何が起こったとしても嘆いてはいけない
不幸の中にはどこかに小さな幸せが必ずあるはずだから
その小さな幸せを精一杯抱き締めればいい
その幸せを見つけることができるかどうかは
あなた次第
:118:
結局 幸せと言うのはなんなのだろう
そんなことは人によって違うのだから
他人がかってに基準を作ることはおかしなことだ
私の幸せは私だけの幸せ
人に分け与えたとしても 相手にとってはまた違う幸せ
この世には 同じ幸せなんてひとつもない
:119:
下でパタパタとスリッパの音がする
こげてしまったトーストの香とそれを見た母の悲鳴
暖かい羽毛布団に窓から射す新鮮な朝日
こんな当たり前な朝を私は今幸せだと感じている
この当たり前の世界は今の私にとって当たり前の世界ではなく
失い もう決して現実に戻ってくることのない日常
血の臭いがする
周りには沢山の私と同じような人間
死んでも死に切れない自殺者達
死んだ時の姿のまま痛みをとめることのできない身体
生きている時の生活に堪えられなくなったものたちの末路
己の命を絶つと言うことの代償
心でもなお続く苦しみ
夢を見ていた
生きている時幸せだった頃の記憶
それが夢として 血の臭いを一瞬でも忘れさせてくれた
首が 首から血が絶えまなく溢れ続ける
手で押さえ付け手も血が止まることはなく
頭痛に吐き気 幾度も遠くなる意識
気絶すれば何度も同じ夢を見て
起きればまた出血していて
何度も何度も同じことの繰り返し
発狂することもなく
いっそ 発狂してしまった方が楽だと言う程
夢はそんなことを忘れさせてくれる
楽しかったあの時
幸せだったあの日
それでも 目覚めてしまえば一度見てしまった幸福が忘れられず
苦しみはよりいっそう辛くなるばかり
こんなことなら夢なんて見なければよかったなどと一一
:120:
長い年月をかけてつかみ取った幸せは
この手で触れたとたん目の前から霧のように消えてしまった
幸せは築くのは長くても 失うのはこんなにも早い
:121:
泣いている子がいる
私のすぐ側で泣いている子がいる
守ってあげたかったけど私にはそんな力はなくて
助けてあげたかったけど私にはそんな勇気はなくて
小さな子は幸せを探しに遠くへと旅立ってしまった
私は小さな子を守る身とも助けることもできずに
ただ小さな子が自分の側で息絶えていくのを見守るしかなかった
小さな子よ 私はお前が私を恨んでいるものと思っていた
小さな子 小さな子 私の大切な とても大切な
私はお前を守れなかったのに 助けなかったのに
私はお前に恨まれても何も言えないたちばなのに
なのに 何故お前は 私に「ありがとう」と一一
:122:
ぼくの仕事はぼくとであった人間の願いをひとつ叶えること
まあ 叶えると言ってもただの夢を見せるにすぎないのだけど
この仕事は本当はやりたくない
だって人間の願って来ることと言ったら自分の私利私欲ばかりで下らないったら!
「永遠の富を」「皆オレの思い通りに」
その願いは持っているだけで最終的には身の破滅をもたらすと言うのに
人間は学習もせずにずっと似たようなことばかりボクに願ってくる
気がついていないのだろうか 自分の本当の願いと言うものに
「何を言っているの? これが私の本当の願いよ」
ああ やはり人間はこの世界で一番下等な種族だと改めて思った
「不老不死にして」「願いごとできる回数をもっと増やして」
下らない下らない下らない
どうしてこんなことしかこいつらは願ってこないのだろう
他にもっとましな望みはないのか?
そしてぼくは彼等に夢を見せる
永遠の眠りにつかせ 彼等の身体は近くの泉にしずめてやる
その寝顔の幸せそうなことと言ったら
ああ なんて虚しいことをぼくはしているのだろう
ある日ぼくは今までに出会ったことのない願いごとをされた
「この世界を壊してくれ それが出来ないと言うのならオレを殺してくれ」
その青年は世界の総てに絶望していた
ぼくはどうしたらいいのだろうか
この青年はぼくと同じ思考を持ち合わせた仲間だ
もっと違った願いごとなら快く叶えてやれるが
ぼくは世界の破壊は許されていない
もちろん 人間を夢意外で殺めることも
でもこの青年の願いごとは夢にするには難しい
青年はうつろな眼でぼくを見上げ懇願してくる
ぼくはどうすればいいのだろう ボクハドウスレバイイノダロウ
「一一ぼくと……ぼくと一緒に愚かな人間達に夢を見せよう」
「ぼくは『夢』を司る精だ ならあなたは『悪夢』を司る精になればいい」
「それではだめなの?」
ある日 独りの痩せ細った男がぼく達のいる森に迷い込み ぼく達を見つけた
さあ 仕事だよ
「あなたの願いをひとつだけ叶えて差し上げよう」
「あなたは幸せを望みますか?」
さて この男に『夢と悪夢』 どちらを見せてあげようか一一
トラックバックURL↓
http://sorehakuroineko.blog123.fc2.com/tb.php/240-1882f272


