はしっこで独り言

日常の掃溜め。主な内容は演劇部とラビアレとMETEOS。——本家「Empty SORA」の方から来た方はブラウザで戻るか横のリンクからもう一度入ってください











 空を見上げ、DJはため息をついた。ここ四日間、ロクのなものを食べていない。今、腹はきゅうきゅうと切なそうに泣いていて、彼は気分が悪かった。確か最期に食べたのは、お情けでパン屋のオバサンに譲ってもらったパンの耳五本——



春終わるころ



 思えば、この人工惑星にやってきてから、もう七ヶ月になる。時間とはなんて早くすぎてしまうんだろう。この星に憧れて、貨物船を密航してきたあの瞬間が昨日のように感じられる。確かあの頃は、こんなに目線も低くなかったし、腕っぷしも結構強かった。ところがどうだろうか。この星に着いてそうそう変なやつに捕まって、身体をこんなに縮められてしまった。
 DJは自分の身体を見下ろして、また一つ、ため息を吐いた。
 今彼は、土手の草の上に座り、川をぼんやりと眺めているところだった。本当なら今日は『スクール』に行かなければならない日だったが、腹が減りすぎてどうしてもそんな気分になれず、無断欠席する事に決めたのだ。でも、家の中にいるのでは腹がたまるわけもなく、仕方がないから、こうして外にでて、何か落ちていないか探していたわけだった。でも、そろそろ限界だ。腹が減りすぎて力が出ない上、頭も痛くなってきた。DJは、空を見ている格好のまま後ろに倒れると、青い顔をして寝転んだ。もうだめ……俺、死ぬかも。


「ア、DJサン!」


 頭の上から、少し機械音の混じった声が聞こえてきて、DJは思わずびくりと身体を緊張させた。あの変なやつの所にいたAI。今はスクールの幼年組で一緒に勉強をしているグランネストだ。おいおいおいおい、今授業に出てるんじゃないのかよ。


「コンナ処デ、何ヲシテイルノ? 今、スクールニイルハズデショ?」


 グランネストはパタパタと、買い物篭らしきものを片手に、土手を降りてくると、あおけのままのDJを覗き込んだ。


「お、お前こそ、こんなとこで何やってんだよ」
「ボクハ、オ使イ。マスターガ今、最近流行ノコンピーターウイルスニカカッチャッテ、ワクチンソフトヲ買ッテキタトコロナノ」


 ということは、今スクールにはフォルテとダウナスしかいない事になる。あいつらだけじゃきっとまともな授業にならないだろう。
 幼年組は、殆どグランネストとDJだけが問題に答えているようなものだった。ダウナスは睡眠薬片手に寝たふりをするのに忙しいし、フォルテは、いちいち手をあげる事に怯えてなかなか発言しない。そこで、グランネストが素早く手をあげると、さらさらと問題に答えてしまう。DJの発言が許されるのは、グランネストが頭を休めている時だけだ(それでも結構発言出来る)。DJはおたおたしているフォルテと、ぐうすか狸寝入りをしているダウナス相手に、教師が困った顔をしているのを想像して思わず苦笑した。


「DJサン、何ダカ顔色悪イネ。ドウシタノ?」
「腹が減ってるんだ。今日休んだのはそれも原因」
「ソレナラ、コレアゲル」


 グランネストは、買い物篭からリンゴとバナナ、それからたまごを一つ取り出すと、DJに渡した。DJは、その微妙な組み合わせの食べ物を見ると、まずすぐさまリンゴにかじり付いた。


「ありがとう、助かった」


 グランネストは嬉しそうに笑うと、そろそろ行かないと、といって土手をあがって行った。何故たまご一つなんだろうという疑問が残ったが(どうせなら丸まる一パックくれたらいいのに)、それでも、ある程度腹の虫が治まった彼も、また何か落ちていないかと探すために土手を離れた。


 春も終わり、麗らかな陽気から、もうすぐ夏に向かって空は色を変えて行く。春の風に、夏の陽射しはとても気持ちがよかった。












 日常の切れッぱし。






















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